2012/06/12

the cutter & tailor MORNING COAT by Saks

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右から3番目。
彼の着ている「MORNING COAT」が今回の主役です。




今まではLounge SuitSack Coatをパターンに特化し紹介してきましたが、今回のMorning Coatでは「芯地の構成」に着目しようと思います。



パターン同様、芯地もまた時代によって大きく異なります。
あの異常なまでの「着込み分」をどの様にして支えていたのか、パターンと芯地が連動し、始めてあの時代のバストボリューム・丸みが形成されます。


まずは、サッと型紙をご覧下さい。

下はお馴染み「JOHN WILLIAMSON COMPANY(London)」の1890年代のモーニングのパターンです。





続いて、こちらは以前、某テーラーさんの講習で頂いたモーニングのパターン。
目の前で1から製図して頂きましたが、複雑怪奇でワカリマセンでした・・・








と、まあ、今回はパターンはサラッと流して・・・

実物を見てみましょう。!



今回チョイスしたMorning Coatはコイツです。!





このモーニングなんですが、キワドイです。とても怪しいんです。!


ひとまず、スペックです。

製造日・1930年代後半~50年代初頭くらいだと思います。仕立ての雰囲気から20年代まではいかないと予想しています。
う~ん50年代はいきすぎかな??

ブランド・Saks Fifth Avenue NEW YORK5番街に構える超高級デパートです。



まあ、コイツの何が怪しいかと云うと、分解すればするほど怪しいんです。

麻芯や特殊な胸増し芯、ハンドの仕立てなどVintageのポイントは押さえているんですが、
縫い代に「縫込み分」が一切入ってないし、生地の質感などが、どうも怪しい。
裏地はシルクで前肩処理がタック。う~ん怪しい。と、思いきや総絹糸縫製・・・・

謎の多い、掴みどころの無いモーニングです。   が、不思議な色気があります。



以上を踏まえ、コイツは、かなりの洋服マニアがSAKSにオーダーしたのではないか?

と、私は思います。



「芯地は麻芯にしろ!」「縫製糸は絹糸しか許さん!」「ハ刺しは手でやれ!」「衿裏と胸裏にはこのステッチを入れろ!」   「当たり前だろ!裏は総シルクだ!!!」


なんて感じでオーダーしたのではないでしょうか?
そう考えると、パターンや縫い代との矛盾がなくなると思うんです・・・真実は謎ですが・・・







で、



ザッ と全体を紹介します。





縫い目は全て「割り」です。
全体的にサラッと上手く仕立てられています。





この装飾は確実に後付けされたものだと思います。
付け糸もスパンでしたし、何より素材が安っぽ過ぎます。

ボタン、装飾関係は全て後付けされた感じです。



このモーニング、端は全てパイピングで処理されています。

驚くことに、このパイピング、手で纏られているんです。手間ひまかけて仕立てられたのが伺えます。



中々、オシャレなフィッシュマウスだと思いませんか?
良いバランスです。

もちろんホールは手です。





顎癖もしっかりとられています。腰のスッテチも秀逸です。



ゴージは「梯子まつり」です。
いわゆる「上衿後乗せ」ってヤツです。
それに伴い、裏地も後乗せです。プレタでコレをやるのは難しいです・・・仕立てならではの衿付けです。

「SAKS」の名に恥じぬ高級仕立てです。ホント。





そして、袖です。この袖もスゲエ、うさん臭いです。!!!
(室内で撮ったので暗いです。すいません。)



袖口には麻芯が噛ましてあります。




基本的に身頃も袖も縫い代に縫いこみ分は無し。!
全て8mm~10mm縫い代です。


何故、これ程の仕立てで縫込みを付けなかったのでしょうか??
「縫込みがあるとダボつくから付けるな!」とでもオーダーしたのでしょうか?だとしたら、相当のマニアですね。



そして、この袖のカーブ。!



何か、1840~1910年くらいの洋服達の雰囲気が無いんですよね。
うまく、まとまっている。と、云うか洗練されている。と、云うか・・・

チョット、カッコ良すぎなんです。私的には、この袖。
こんなコトも有り、30年代~かなと思うのです。

しかし、袖全体としてのラインは「ソレ」らしい味があり、ニクイ袖です。




今まで紹介してきたVINTAGEの服達には、大抵の場合、袖口にステッチが入ってます。
コイツはパイピングですが。

このステッチで、袖口の芯を押さえています。
ボタンは見るからに後付けです。もっとマシなボタンは無かったのでしょうか?






さて、ここからは裏地を見ていきます。





「プレイト・ポケット」はモーニングに欠かすことの出来ないディテールです。





さあ、このステッチ。
デザインとしても一役かっていますが、ちゃんと役割もあります。
後ほど紹介します。






表地に縫込み分は一切はいっていなかったにも関わらず、裏地には付いています。何故?
ちなみに裏地は、ほぼハンドで止められています。






上の画像は衿、ゴージのUPです。嗚呼、もうワクワクがとまらいでしょう?



麻芯へのハンドでのハ刺しに感動しつつ、ようやく「芯地の構成」に入っていきます。

相変わらず長い前置きで申し訳ないです。




此処からが本番です。








それでは、ドゾ。!










この麻芯、柔らかさとコシとハリのバランスが絶妙なんです。こんな麻芯で服を作りたいです。

舘野さんが以前、作られたSheep Collar Coatに使わている麻芯とは、また違った雰囲気です。
かと云って、テーラーの衿芯に使われるような麻ともまた違い、独特の「しなやかさ」があります。

これを台芯に使うのも納得です。
















「白バス」って値段がとっても高いんです。ほんの少ししか使わないのに。!
でも、白バスに鋏を入れる時の、あの「ジュリンッジュリンッ」という感触と音はたまらないです・・・デュフフf








このチャコール色のがそうです。

この芯はハンドではなくマシーン付けになりますが、縫い目からしても古いミシンで縫われているのがわかります。






あっても無くてもイイんじゃない?って感じの薄く頼りない芯ですが、それぞれの芯を上手く馴染ませ一体化させる大切な役目を兼ねています。食べ物で云うところの「もやし」的な存在です。






こんなに切り込んで大丈夫なのでしょうか?

分解するのにもハラハラします。



いや、しかし、台芯の麻といい、この胸増しのネルといい芯選びが非常にユニークで、かつ理に適っています。
そして、しっかりとした「スタイル」にしてしまうのだから、開いた口が塞がりません。
研究に研究を重ねた結果なのでしょう。勉強になります。










実際は上記画像の位置に躾止めされていました。


ナンダコレ?と躾を解き、裏返してさらにビックリです。



裏返すと、バス芯が出てきます。
バス芯を一回り小さくすることで、バス芯の馬の尻尾の飛び出しを麻芯で防いでいます。

結構、刺さりますからね。 苦い経験有りです。笑





横糸の黒色の糸が「馬の尻尾の毛」です。非常にハリがあります。





先ほどの芯と丁度、重なる裏地の位置に、また怪しいヤツがいます・・・



あの裏地のポケット上部に入っていたステッチの正体はコイツだったんです。

裏地への謎のステッチには色々な種類があります。
この様に「フェルト止め」だったり「台芯止め」だったりと目的により様々なステッチが入ります。

単純にジグザグに走るモノもあれば、画像のようにデザインされたステッチもよく見られます。
デザインされたステッチには、なぜか「一筆書き」が多いです。
「脇刺し」も一筆書きが大半ではないでしょうか?











この芯も定番です。
その時代の美意識を感じさせる芯使いです。

上の画像の説明で「ラウンジスーツにはあまりない芯だ」と書きましたが、あります。
「ないものもある」って感じです。基本的にあります。すいません。




中にはフェルトが入っています。
このモーニングは、なんと3種類ものフェルトが使い分けられています。







毛芯関係は、以上です。


イラストを見て頂いて解る通り、とにかく胸!胸!胸!!!
バストボリュームをどれだけ美しく魅せるかが、ポイントになっていると思います。


さすがに、現代でこの芯地構成は必要ない(需要がない)と思います。
が、「学ぶ」ことは非常に多いです。刺激を受けます。
麻芯やネルの使い方、前肩の処理法など、こちらが「気付く」ことさえ出来れば、いくらでも糧にすることが出来ます。



で、



テープ使いも紹介します。サラッとね。


地の目通しの麻・バイアスの麻・コハクテープと、テープの使い分けも抜かりなく秀逸です。




メンドクセエ時間がなく、まとめきれませんでしたが、肩パット・裄綿(タレ綿)も写真で簡単に紹介します。




袖裏はやはり縞です。


肩パット・裄綿は、毛芯などは使われておらず、基本的にフェルトで出来ていました。






と、


この辺でthe cutter & tailor MORNING COAT by Saksはお終いです。



やっと、芯地について簡単ではありますが、書けました。
紹介したい古着の芯地構成が、あと3つあるんですけどね・・・・ 嗚呼。


ちなみに、今は仕事とブログと研究の間で、自分のコートの裁断に入るとこです。!
このコートの最大の目的は、「量産出来る前肩処理」です。(厚手の綿地)
まだ、実験段階ですが、シーチングでまずまずの出来デシタ。
以前、講義を受けたテーラー松田先生の技をチョット応用してみました。はやく縫いたいです。・・・




で、ココ最近、某テーラーのT君と興味を持っている「Germany Tailored」ドイツの仕立てです。

なかなか資料が見つかりませんでしたが、少しづつ集まってきました。









うーん、興味深い・・・



洋服作りってなんて楽しいのだろう。しかし、眠い。



1 コメント:

  1. 匿名12.6.12

    凄いよ!凄いよ!何だか身震いするね。
    自分も仕立てをしたい衝動がまた…あともう少しで…

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