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The cutter & tailor Lounge

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みんな大好き「Lounge Suit」
今回、紹介するモノは"こっち系"のラウンジスーツです。
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おお美しい・・・ブルジョワジイィ
袖のドレープがなんて美しいんだろう。
こんなに古いセピア写真なのに、素晴らしい生地で仕立てられているのが伝わってきます。
奥行きのあるドレープです。




さてヽヽ、今回はこの写真をピックアップ。



上の写真は1893年デンマークのBernstorff Castleで撮られた写真デス。

左端、ステッキを持った紳士が着ているスーツとほぼ、同型のジャケットがウチにありましたんで紹介しようと思います。


私はラウンジスーツの中でも乗馬服の名残が、まだ強い頃のモノが好きです。
今回紹介するジャケットも「シングル前4つボタン」「ウエストシーム」「ポケットの省略」などから、~1890年くらいに仕立てられたモノだと思います。
もちろん以前に紹介しました、この特徴もしっかり、見受けられます。

それではドゾ。!



この胸の"丸み感"と云うか鳩胸な感じが愛おしいです。
これは着てみないとワカリマセン!身体で感じてみましょう。!



ハイ、お決まりのボタン外すと裾が勝手に開けてくれます。
この時代は、第一ボタンのみを止めて着ることが多かったそうです。




それでは、ラペルに注目してみましょう。
登りがラフですねえ。可愛いです。





嗚呼、英○屋のS君、T君。
私はこんなラペルを作ってみたいんだ。
このネガ見てよ。ヤバイでしょ



なだらかな登りになんとも云えぬロール感。胸巾・肩巾のナローな印象。
可愛らしいケドとても上品です。
この色気が欲しい。こんなジャケットに出会いたいし作りたいデス・・・
嗚呼、出会いたい・・・






この写真なら伝わるでしょうか。
この胸の丸み。!
写真を撮る為にこうしているのではなく、当時のジャケットは自然にこうなります。変わったパターンですホント。





虫食いの跡からジュート芯が確認出来ます。




どうですか、この仕立て!
感動するでしょう?

独特の被せ衿に、茶色のハ刺し、顎癖、衿裏のステッチ!



もちろんホールも手縫いです。ピンボケしてるけど。

端がダブルステッチなのも乙です。しかも0.2c+0.85cです。2本針か!と。



さて、French Hunting Jacketでも触れましたが、やはりツギハギの地衿(共地)です。
こちらは4枚に分かれていますね。

しかし、これは地の目をたどると、月腰の展開はされていない様です。
つまり本当に生地が足りなかったのか?な?

それもさておき、これだけベタ置きしてるのに肩の立体感が全く潰れないのはサスガの一言デス。
くっきり残っている返り線もサスガ。!
とても120歳のジャケットには見えません。




そして、私が毎回注目してしまう 「鎌深」 アームホールの深さです。

ウーム・・・やはり非常に浅いです。



さて、ここでどれだけ鎌底が浅いのか判りやすいように、ジャケットをひとつ用意しました。

ちなみに、この茶色のジャケットは、Blue Shears久保田博さんのモノです。(多分、パターンオーダー)



どうでしょうか?
当時の服がどれだけ鎌が浅いのか一目瞭然です。

身幅も着丈もラウンジスーツのがデカイのに鎌はこちらの方が浅いです。
不思議なバランスですよねえ。
このバランス感、現代の服じゃまず見ないですよね。

この着心地と機能性を消費者の方に知って欲しいです・・・
ランドナーなんかを優雅に乗る方なんかに知って欲しい・・・この鎌を・・・




この時代には、まだ「細腹」なんてハイカラなものはありません。
かわりに胸に向かって斜めに走るダーツがとられています。見えるかな?





そして
嗚呼、この後姿。!


4ピースの背中!


ちなみに、今回紹介しているこのジャケットは肩パットがしっかり入っていて、肩周りにかなりのボリュームがあります。
当時良く見られた「なで肩」の雰囲気とはまた違います。




この写真から前回紹介しました外袖のダーツの雰囲気が何となく伝わって来ませんか?





ちなみにこのテールですが、何故この様な形になったのかご存知でしょうか?


ずーと疑問だったのですが、服部先生の講習会に参加して疑問が解けました。なんともビックリな解答でした。
その説明はまた今度、燕尾服やモーニングを紹介するときに話します。!



さて、それでは裏地を見ていきましょう。
当時の服の何がオモシロイって、そりゃ、型紙やらステッチやら何やらありますが、現代の服とこうも作りが違うのはヤッパリ裏地でしょう。
ジャケットひっくり返せば宝箱ですよ。!



それでは、ドゾ。!



どうです!?

なんともまあ、不思議な仕様です。
惜しまず裏地がタップリ使われているのが写真からもお分かりでしょう。こうゆうの大切ですよね。




ハイ、このAH(アームホール)についている台形型の布、以前から私がチョイチョイ口に出していた「クンニョ」がコレです。

初めて見る方も多いのではないでしょうか?


これは、もう廃れてしまった古い前肩処理の方法です。
私が見てきた古着の限りですと、19世紀後半のジャケットには中々見られました。
1930年~くらいになると、ほとんど見られなくなるように感じています。
機織の技術が飛躍的に向上し、薄い生地が織れるようになった頃に、このディティールは消えてしまったように思います・・・


現在の前肩処理の方法としては、横にプリーツをとったり、縦にダーツをとったりと云うのが一般的ですよね。
しかし、ウチにある古着たちには、ほぼみんなコイツがいます。(と云っても4割程度。)

当時のヨーロッパでは、まま一般的なディテールだったのでしょう。
このデティールも現代の服で見たことはありません・・・



と、思いきやありました。!





素晴らしきナポリ仕立て~サルト・ドメニカ ラファニエロの手縫いスーツ~様です。!!




このブログを発見した時は驚愕しました。
何だこれは!と・・・・次の日寝不足になったのは云うまでもありません・・・


この「クンニョ」と云う名前を知ったのはこのブログがきっかけでした。

ウチの古着たちに付いてくる、この台形の布は一体何なのだろうか?
分解をして切り込みを確認し、前肩処理をしているのだな。!と検討はついていたのですが、
いかんせん、このディテールの名前がわかりませんでした。

そんな時に偶然発見したのが、この「素晴らしきナポリ仕立て」様でした。
嗚呼、有難う御座います。いつも楽しく見ています。勉強になります本当に。



ハイ、

続きまして、見返しです。
もしかすると、こんな見返しの仕様もはじめて見る方が多いのかもしれません。







ウエストの上までは見返しに裏地をミシンでたたいていますが、ウエストから下は細い見返しにハンドで止めています。
この仕様は当時の上物に本当に良く見られます。(フロックやモーニングなど)

何故、このような仕様なのでしょうか?


私はリペアをしやすいように、この様な仕様にしているのではないか?と考えています。

「昔は袖裏や裏地を交換して大切に永く着ていた」と云うのは良く聞きます。
明らかに袖裏を付け替えたようなジャケットなどを古着で見ることも多々あります。

それと同じように、乗馬の際に擦れ易いウエストから下はなるべく表地(見返し)を少なくし、裏地はハンドで止めて、痛んできた際に交換しやすいようにしていたのではないか?と云うのが私の考えです。

どうなんでしょうかねえ?

フッロクコートなどになると、前端をボタン止め出来ますからね。その話は後々・・・






手縫い糸は麻糸のようです。



もちろん、プレイト・ポケットも残っています。

こーゆーラウンジスーツは本当に良い。!
時代の変化を感じられてワクワクします。




そして、前回も紹介したS字カーブの袖です。





ボタンは「くるみボタン」です。
ラウンジスーツにはよく見られますね。可愛いです。



ハイ、
こんかいは以上です。

実はこの記事、もっともっと長かったんです。
あと、写真が8枚ほどありました。が、メンドクセエ記事が長すぎた為に省略しました。

今後も、しばらくはラウンジスーツ系を中心に更新していこうと思います。
「基本のき」ですからね。

その合間々々に、私の大好きなハンティングウェアなんかを挟んで紹介していきたいです。
あああああああああおやすみなさい!





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